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香りの世界

オリス、サンダルウッド、ベチバー、ラベンダー、香道など、香り素材の文化と歴史を辿るストーリー。

いちじくは実だけの香りじゃない -- 地中海の木がまるごと香る、夏のグリーンノートの物語

— フィグの香水を嗅ぐと夏の木陰が立ち上がる。でも天然の「いちじくの香り」は存在しない。葉のグリーン、実のミルキー、木のウッディを一本に再構成した、地中海の夏のノートの物語。

沈香(じんこう):傷ついた樹だけが生む千年の香り。伽羅とアラビアのウードが同じ木だった話

— 正倉院の名香「蘭奢待」に残る権力者たちの切り取り痕から、健康な樹ではなく傷ついた樹だけが香木になる不思議、最高峰「伽羅」の理不尽な希少性、そして同じ木が中東で「ウード」として香水の王になった物語まで。世界一高価な木の正体が「病気の木」だった話。

薄荷(ハッカ):北見の畑が、いちど世界の7割をつくった夏の話

— 明治の開拓地・北見が、世界の薄荷市場の約7割を握った時代があった。ハッカ成金とハッカ御殿、そして合成メントールに敗れて消えた畑。日本の夏の清涼感の正体を、和ハッカ独特のキレとともに辿る物語。

パチュリ:60年代の反逆児が、なぜ高級調香の『縁の下の力持ち』になったのか

— 「ヒッピーのあの匂い」と敬遠されがちなパチュリ。けれど18世紀のカシミアショールでは『本物の証』であり、今は高級香水の土台を静かに支える定着剤です。土とダークチョコの香りをめぐる、文化的評価の振り子の物語。

1992年、香水に『緑茶』が入った日。ジャン=クロード・エレナが2つの分子で再現したお茶の話

— 新茶の湯気の中に立ち上がる、あの数秒の青い香り。それを瓶に閉じ込めようとした調香師が35年前にいた。茶葉を一滴も使わず合成分子だけで『お茶』を描いた、ブルガリ Eau Parfumée au Thé Vert(1992年)の物語。

乳香(フランキンセンス):砂漠の樹の涙が、5000年かけて私の部屋に届くまで

— 古代エジプトでは「太陽神ラーの汗」、聖書では金と等価の贈り物、現代では絶滅危惧の樹脂。オマーン・ドファール地方の砂漠で5000年続いてきた乳香(フランキンセンス)の物語と、空間用フレグランスで楽しむ方法。

ヒノキ:千年の社が守ってきた、日本だけの香りの記憶

— 法隆寺を1300年支え、伊勢神宮で20年ごとに切り出され、私の祖父の家の風呂の脱衣所まで運ばれてきた木。日本人なら一度は嗅いだことのある、でも輸入物のフレグランスの香料表には出てこない「ヒノキ」という香りの正体を、千年単位で辿る物語。

夜明け前のバラ畑 -- ダマスクローズが朝にしか摘まれない理由

— 5月のブルガリア、午前4時に始まるバラの収穫。1グラムの精油に5000輪のバラ。世界最高級ローズオイルが太陽との競争で生まれる仕組みと、家庭での楽しみ方。

3年、暗闇で眠る根 -- 世界一高価な香料『オリス』が花ではなく球根だった話

— あなたの好きなあの香水のハートには、フィレンツェの暗い倉庫で何年も眠っていた根っこがいる。シャネル No.19、ディオール オム、プラダ・インフュージョン・ディリス。名香の中心にいるオリス(アイリス・ルート)の正体。

白檀(サンダルウッド):マイソールの森が消えても、私たちが嗅ぎ続ける理由

— 30年以上かけて心材を作る半寄生の樹、世界最高品質と呼ばれたマイソールの森、そして1996年に生まれた合成分子。仏壇のお線香から私のリビングまで、5000年の旅路の終着点で、私たちが嗅いでいる「白檀」の正体を辿る物語。

ベチバーという根の物語:ハイチの嵐とインドの夏、私の本棚まで

— ゲラン、シャネル、トム フォード。名香の足元に必ずいるのに、名前を知らない人が多い香り。タミル語で「掘られた根」と呼ばれた一本の草が、カリブ海の山を救い、インドの夏を冷やし、私の本棚で焚かれるまでの物語。

なぜラベンダーは「万能の香り」になったのか -- プロヴァンスの畑から私のリビングまで

— 「おばあちゃんのタンスの匂い」で片づけるには、2000年の歴史は長すぎる。古代ローマの公衆浴場からプロヴァンスの丘、北海道の富良野まで。ラベンダーが世界一身近なフレグランス素材になるまでの物語。