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日本香堂・松栄堂・鳩居堂、結局どこを選べばいい? ― 江戸・京・現代をまたぐ老舗お香ブランドの選び方ガイド

ガイド
お香ブランド比較松栄堂鳩居堂日本香堂選び方ガイド

あの3社が、初めて一緒に作った香りを知っていますか

2025年の春、ちょっとした事件がありました。300年以上続く老舗3社、日本香堂・松栄堂・鳩居堂が、史上初めてコラボして「EXPO INCENSE」というインセンスを出したのです。世界の6大陸をテーマに、各社が大陸ごとに分担して作るという、お香業界では前代未聞の試みでした。

このニュースに「えっ、その3社って今までライバル同士だったの?」と気づいた人、けっこういると思います。私もです。

正直に言うと、お香売り場で「松栄堂」「鳩居堂」「日本香堂」と並んでいるのを見ても、私にはどれがどう違うのかまったくわかりませんでした。全部「老舗のいいお香」で頭の中ではひとくくり。だから、雑貨屋で15分くらい棚の前で固まって、結局いちばんパッケージが可愛いやつを買って帰る。これを何度やったかわかりません。

このガイドは、あの15分の自分に渡したかった選び方マニュアルです。老舗5社の調香哲学と価格と入手しやすさを1枚の表で見渡して、最後に「あなたの性格にはこれ」で一本に絞れるように整理しました。

まず、5ブランドの早わかり比較表

細かい話の前に、全体像を一枚で。お部屋焚き用のスティック香(20本前後)を基準にしています。

松栄堂鳩居堂日本香堂香十薫玉堂
創業1705年(京都)1663年(京都→銀座)明治・東京1575年(京都)1594年(京都)
看板商品芳輪 堀川室の梅・梅ヶ香毎日香・かゆらぎ沈香雲井モダンインセンス各種
価格帯(20本目安)約1,100円〜約1,000〜1,500円約500〜1,200円約1,650円〜約1,000円〜
調香の方向天然100%・正統派古典・優美天然+合成・現代幅広香木重視・聞香文化モダンデザイン
入手のしやすさ◎(全国専門店・銀座本店)◎(銀座本店・京都・通販)◎◎(コンビニ・薬局・通販)○(銀座本店・通販)△(京都本店・通販)
こんな人に王道で外したくない古典・上品志向日常使い・コスパ香木をじっくり聞きたいデザイン・若年層

松栄堂・鳩居堂・日本香堂・香十・薫玉堂の5ブランドを性格タイプ別にマッピング:松栄堂は王道・正統派、鳩居堂は古典・優美志向、日本香堂は日常使い・コスパ重視、香十は香木通・じっくり派、薫玉堂はモダン・デザイン志向

ざっくり言うと、王道の松栄堂、古典の鳩居堂、日常の日本香堂、玄人の香十、モダンの薫玉堂。この5軸で性格が分かれます。

松栄堂 ― 「最初の一本で外したくない人」へ

京都・烏丸丸太町に本店を構える松栄堂は、1705年(宝永2年)創業で300年以上お香一筋。「天然原料を手作業で調合する正統派」と言えば、まず名前が挙がるブランドです。

看板は芳輪シリーズの「堀川」。インド産白檀のまろやかな甘みを軸にした、料亭や旅館でも使われる和の定番香で、松栄堂のなかでも人気No.1です。スティック20本入りで税込1,100円、徳用80本は3,300円。「白檀ってどんな香り?」と聞かれたら、まずこれをすすめておけば外さない、というレベルの基準点。

何から始めればいいか迷っているなら、まず「堀川」、もしくは5種類のお試しセット**「芳輪 京五彩」**(20本1,180円前後)で天平・室町・元禄・白川・二条を聞き比べてみてください。ここから自分の好みの方向が見えてきます。

こんな人に: 失敗したくない、王道から入りたい、誰に出しても恥ずかしくない一本がほしい。

鳩居堂 ― 「古典と優美」が好きな人へ

1663年に京都で創業し、明治以降は銀座に進出。この「京都と銀座の二本立て」が鳩居堂の独特な立ち位置を作っています。書道用品や和紙の名門でもあり、茶人・歌人・文人に愛されてきた古典文芸の香りが看板です。

代表的なのは練香(ねりこう)の「梅ヶ香」(20g 2,200円)や、線香の「室の梅」「松柏」「金粉花」シリーズ。スティック香で1,000〜1,500円ほどの価格帯が中心で、白檀・沈香を軸にした穏やかで凛とした香りが多いのが特徴です。

松栄堂が「正統派の王道」だとすれば、鳩居堂は「古典美の世界観」。和歌や茶道、お正月の初釜のような場が似合う、少し背筋が伸びるような上品さがあります。銀座本店に行くと、お香だけでなく和紙や絵はがきも並んでいて、世界観ごと買って帰りたくなる雰囲気です。

こんな人に: 古典芸能や和の文化が好き、贈答用にも使いたい、日常から少しだけ姿勢を正す香りがほしい。

日本香堂 ― 「毎日使う一本」がほしい人へ

3社のなかで唯一、明治以降に大きく成長した近代ブランドが日本香堂。東京拠点で、天然香料と合成香料を上手に組み合わせることで、価格と現代テイストの幅広さを実現しています。

ロングセラーは「毎日香」。明治の世から続く「日本のお線香の代名詞」で、白檀ベースの親しみやすい香り。バラ詰めで500円台から買える手軽さは、他のブランドではなかなか真似できない強みです。

スティック香では「かゆらぎ」シリーズ(1998年〜、税込1,210円前後)が看板。白檀・沈丁花・金木犀・桜・柚子など、和の素材を1本に1テーマで展開していて、「今日は金木犀の気分」「明日は柚子」と気分で選べるのが楽しい。着物柄のパッケージも可愛い。

宇野千代監修の「淡墨の桜」のような贈答ラインもあり、コンビニや薬局でも棚に並んでいる手軽さは、5ブランド中で頭ひとつ抜けています。

こんな人に: お香を生活に組み込みたい、気分で香りを変えたい、まずは安く色々試したい。

香十 ― 「香木をじっくり聞きたい玄人」へ

ここまで読んで「もっと本格的な香木を聞きたい」と思った人へ。1575年(天正3年)創業の香十は、3社よりさらに古い450年近い歴史を持つ、お香業界の最古参のひとつです。御所御用を務め、豊臣秀吉・徳川家康にも献上していたと伝わります。

看板の「沈香雲井」(スティック20本入り、円錐10個入り1,650円〜)は、上質な沈香に白檀と生薬香料を重ねた、香十家伝の調合。日常の和風香というより、夜にひとりで聞香(もんこう)するような、深く沈む香りです。

銀座本店では実際に香木の聞香体験もできて、「白檀と沈香の違いを鼻で覚える」という、ちょっと贅沢な時間が過ごせます。香木への没入度では随一のブランド。

こんな人に: 安いお香に飽きた、香木の世界を知りたい、夜の瞑想や読書時間を格上げしたい。

薫玉堂 ― 「モダンデザインで現代的に楽しみたい人」へ

最後にもう1社。1594年創業の薫玉堂は、京都・西本願寺前で430年続く老舗ながら、近年はモダンなパッケージと若い感性で再ブランディングして話題になりました。

「京香堂シリーズ」やパフュームインセンスは、白・黒・くすみカラーのミニマルな箱に入っていて、インテリアに置いても可愛い。価格も1,000円前後から。伝統の調合×現代デザインという路線が、SHIROやLushを好む層に刺さっています。

こんな人に: お香はインテリアの一部にしたい、ギフトで「センスいいね」と言われたい、伝統的すぎる箱は避けたい。

性格・気分から選ぶなら

ここまでで「ふーん」となっている人へ。性格軸でざっくり決めてしまうフローを置いておきます。

  • 失敗したくない・王道派 → 松栄堂「芳輪 堀川」または「京五彩」
  • 古典・上品・贈答志向 → 鳩居堂「室の梅」「梅ヶ香」
  • 毎日カジュアル・気分で変えたい → 日本香堂「かゆらぎ」シリーズ
  • 香木の深みを聞き分けたい → 香十「沈香雲井」
  • デザインも妥協したくない → 薫玉堂のモダンライン
  • そもそも煙が苦手 → 紙のお香(hibiなど)から入る選択肢もあり

迷ったら、松栄堂「堀川」と日本香堂「かゆらぎ 白檀」を1本ずつ買って嗅ぎ比べるのがおすすめです。「正統派の白檀」と「現代的にアレンジされた白檀」の幅がわかれば、自分の好みの方向が一気に見えてきます。

2025年の話題「EXPO INCENSE」も覗いてみる

冒頭の話に戻ると、2025年の**「香り博2025」で、鳩居堂・松栄堂・日本香堂が初コラボしたお香「EXPO INCENSE」**(6種・各1,650円・約20g)が限定発売されました。アジア・オセアニア・ヨーロッパ・アフリカ・北米・南米と、各社が大陸ごとに分担して調合した、普段は絶対に共演しない3社の香りを一度に試せるシリーズです。

「3社の違いをいきなり比較したい」というオタクな人には、いちばん効率がいい入口かもしれません。再販があれば、お香界隈ではちょっとした事件としてSNSが盛り上がります。

まとめ ― あなたの一本

長くなったので最後に1行で。

迷ったら松栄堂「芳輪 堀川」。日常使いに振るなら日本香堂「かゆらぎ」。古典に寄せたいなら鳩居堂「室の梅」

これでひとまず外しません。そして、いつかは香十の沈香で夜を過ごす、というご褒美を後ろに置いておく。それくらいの距離感で、お香と長く付き合えたら最高です。

「自分の性格にはどの系統が合うか、もっと根本から知りたい」という方は、kaoriq.comの性格タイプ別 はじめてのルームフレグランス選びもぜひ。香りを選ぶときの自分の軸が、ぐっとはっきりするはずです。

それでは、いい香りの夜を。